「自分が荻窪の地図から読み取ったのは山城。でも、ネットで見つかった名前は城山」
「うん。同じものだよね。場所は同じだし」
「なぜ語順が逆なのか」
「なぜだろう? 誤記だから?」
「違う。今ごとになってやっと気づいた。バカみたいだ」
「何が理由だっていうの?」
「この地図への書き込みはかなり古かったんだ。だから、横書きの日本語はまだ左から右ではなく、右から左に書いていた時代の書き込みなんだ」
「えっ」
「だから、山城と読んだのは左右が逆」
「ということは、本当は城山?」
「たぶんそうだ」
「えー」
「そもそも地図も逆順だから、気付くべきであった」
「地図に書き込みするような研究者は現代人という思い込みがあったわけだね」
「実際には自分も現代の地図に昔の情報を書き込んでいるから、当時のリアルタイムの研究者が当時最新の地図に何かを書き込んでいてもおかしくないわけだ」